GODZILLA ゴジラ 〜なんか製作中にトラブルあった気がする編〜

結構前に観たけど感想は今更。いったんTwitterで垂れ流したからね、仕方ないね。
とにかく、ゴジラの出てないシーンが軒並み退屈。ゴジラが登場しない素晴らしい映画なんて世の中にいくらでもあるのに、これはアカン。
予告編から期待された通り素晴らしい出来栄えのゴジラ登場シーンも、その時間が従来ゴジラ作品の半分以下(体感。上映時間は2割増しなのに)ではその他の不出来を誤魔化すまでには至らず、総合的にはとても苦痛な時間を過ごした。
「従来のゴジラ作品もシナリオは微妙」っていう言い回しは散々見かけたけど、本編への貢献度という意味で今作は俺の知る限りのそれらを大幅に下回るように思う。
怪獣登場の前振りとしての描写はどうか。最初の大きな一発としては日本の原子力発電所が壊滅するシーンがある。
どうやら「明らかに自然災害とは思えない何かによって原発が破壊される」というシーンであるらしいんだけど、主人公父が一生懸命「何か変だ」と説明している以外、何一つ「不思議だ」「不気味だ」と思わされるところがない。ただただ原発であるらしい施設が煙を噴き、ついさっき「主人公父の妻です」と説明されたばかりの女性一人が命を落とす。
クローバーフィールドなら自由の女神像の首が吹っ飛ぶ最初のクライマックスに相当するところ、この肩透かしはいかがなものか。根っこが酷いだけに、大作映画とは思えない安っぽいセットやら「日本のジャンジラ市」なる謎地名やらも無視できないレベルで気になってくる。
怪獣映画やら怪物映画はクリーチャー自体が登場しなくても仄めかしで割と楽しめるもんだと思うけど、今作は残念ながらそうはなっていなかったように思う。
ドラマ単体としてはというと、前述の主人公母死亡シーンをはじめ、徹底して「家族だって説明しとけば別離で泣けるっしょ?」と言わんばかりの家族ドラマと、無駄足や失敗に終わるだけの活劇と、展開上何の足しにもならない説明と、怪獣への随伴旅行。以上。
従来ゴジラでも物語の中心で人間のやったことが無為に終わる場面は多々あったけど、ここまで積み重ねなく「駄目でした」「駄目でした」を連発することがあっただろうか。
安っぽかろうがパクりが酷かろうが映画内での役割がキッチリしているからこそドラマシーンは見せ場の埋め草になれていたのであって、それができないようでは本当に「無い方がマシ」のマイナス要素にしかならない。
……という、特撮面の足を引っ張りまくるドラマパートが今作の魅力を大幅に削いでいた感は否めない。
ただ、その特撮面にしても、必ずしも手放しで褒められたものではなかったように思う。
まず、似たようなシーン多すぎ。ゴジラが背びれだけ見せて泳ぐシーンは仄めかしの一環だとは思うけど長々と何回も見せられて見飽きるし、仄めかしなりの見せ場である咆哮シーンも似たようなのが2回あり、むしろ2回目が本番なのに「それさっき見たよ……」って気持ちにさせられる。主人公がMUTOに追い詰められて腰抜かして怯えてるシーンも2回か3回あった気がする。ただでさえ少ない見せ場でマンネリ感を出すなと。
また、今作のゴジラは自然の驚異の象徴だかなんだかそんなものとして描かれているらしい。つまり人類の敵だったり破壊者だったりではないので、例えば近くを空母が航行してても無視したりする。それ自体は別にいいんだけど、「ゴジラが現れたらしくて原発が壊れたんだよ(説明のみ)」「ゴジラが接近したから津波が起きたんだよ(説明のみ)」の2点を除けば、街も壊さず人間も襲わずあまつさえMUTOとも(ラストシーン以外は)戦わず泳ぐか吠えるかしかしてないゴジラが果たして脅威に見えるだろうか。いや、見えない(反語)。旧作でゴジラが悪役だったり間接的に人類の味方だったりしたのは怪獣プロレスを盛り上げるためのお膳立てだったかと思うけど、同じように結局は怪獣プロレスをクライマックスに持つ今作が、立場のフラットな新ゴジラをそこに向けてどう盛り上げてきたかというと、別に盛り上げてない。ラストではほぼヒーロー扱いになるけど、ヒーローとしてすら持ち上げてない。
で、最後の最後にようやくやってくるゴジラとMUTOの最終決戦(≒初戦)では、生物的に蠢く巨大怪獣の映像に「おーCGすげー」とは思うものの、カメラが寄りすぎなのか意外に迫力がない。MUTOのメインの攻撃が刺突だったこともあり、パシフィック・リムで殴り合い壊し合う巨大クリーチャーの迫力を見せつけられた身には何とも物足りない泥仕合が続く。
結局最終決戦でもまともに感動できたのはMUTOオスを殺す尻尾攻撃と、MUTOメスを殺す熱戦攻撃*1のシーンくらい。
あと、この最終決戦で地味に拙い気がするのが、割とすぐに2対1になってゴジラが死にかけるのよね。正直、前回ハリウッド版よりよっぽど「ゴジラ弱ぇ……」って気持ちにさせられて微妙だった。
ゴジラが数で翻弄されて追い詰められるって展開はそれこそ従来ゴジラでもよくあったけど、それってまずはゴジラの強さを見せてからじゃん。じゃあこの映画にまずゴジラの強さを見せるシーンがあったかというと…………あ。
あったわ。
ハワイだわ。
ハワイのMUTO戦がちゃんと見えてれば、このシーンの前振りになったはずだわ。
で、作中でもテレビでチラッと映ってるし、あそこの戦いってある程度映像あるはずだわ。
…………。
 
このブログでは、「ハワイでのゴジラVSMUTO戦は本来見せる予定だったけど何らかの理由でカットされた」説を提唱します。
 
……それはともかく、結果的には戦い始めて割といきなりゴジラが負けそうになってるようにしか見えないのが残念。
 
そんなわけで、ゴジラが出ないシーンが圧倒的に長い割にシリーズ旧作と比べても一際退屈、ゴジラが出るシーンも質・量ともに不満を払拭するには至らず、映画が終わって残ったものは突貫工事でヒーローに仕立てられたゴジラだけ……という、総合的には期待の最低水準すら大幅に下回る残念ゴジラだった、まる。
あと、エンドロールの音楽はクローバーフィールドの方が良かったと思います(小並感)

*1:厳密には放射熱線じゃないんだっけ……?