ダークナイト(The Dark Knight)(2008)
【095/100】感想リメイク。
- 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
- 発売日: 2008/12/10
- メディア: DVD
- 購入: 22人 クリック: 169回
- この商品を含むブログ (435件) を見る
2時間半、一部シーンを除けば最初から最後まで山場続きの本作、大胆かつスマートな上に趣味の悪いジョークまで備わったジョーカーの犯行や、対するバットマンの堅実な近代格闘術とリアルにリファインされた特殊装備を用いたアクション、いがみ合うこともありながら共に正義に燃えるゴードンとデントの真摯な姿など映画的な見所ばかりで常時ハイテンションながら、物語自体は正義の味方たちが弱みを突かれまくって挫かれていくというシリアルかつ重苦しいものになっている。
映像のほとんどが物語を進める主役陣の行動でありながら、随所に「光と闇」を対比するメタファーまで織り込まれ、テーマと物語を描く上での無駄がほとんどない機能美とすら言える構成になっていて、全体及び要所の美麗な映像も含めて完璧にウェルメイドな映画。その反面、どこか無機質な作品世界に人間味の華を添える役割をほとんどジョーカーのカリスマ溢れる所作のみが担っており、ジョーカーが退場した後のラストシーンで唐突にその役割を主役三人が引き継ぐ歪さが、最終的にはバットマンの葛藤と決断をもって締めとする今作の数少ない難点と言えるかも知れない。例えば、夜の通りでマシンガンを構えたジョーカーとバットポッドに跨るバットマンが対峙する名シーン、バットマンがジョーカーに突っ込んでいった*1のは、一線を踏み越える=ジョーカーを殺してでも止める決心をしていたからのはず*2だけど、そんな描写はなかった。そのため、バットマンがどうしてジョーカーに突っ込んでいったかよく分からないシーンになってる*3。例えば、ゴッサム市民はバットマンに感化されたりデントを信じたりジョーカーに恐怖したり良いように翻弄されていたはずだけど、描かれたのはほんの一部にすぎない。そのため、最後のフェリーシーンでは、ジョーカーかデントかという葛藤ではなく、単に生殺与奪を強制されたシチュエーションによる葛藤とバットマンが失望してしまうか否かという緊張感のみがあった。まぁ、それでもフェリーシーンは自分ならと考えさせられる緊張感のあるシーンだし、ラストはデントの顛末とバットマンの決断だけで十分泣けるんだけど。
何にせよ、バットマンの活躍は格好良いし、ジョーカーも悪役としての魅力に溢れてるし、ストレスフルな人物も出てこないし、陰湿な行為も出てこないし、地味に血もほとんど出ない。
トゥーフェイスが目に毒かもしれないけど、ひょっとして子供にもオススメできるんじゃないだろうか。
スカッと観られて燃えて泣けて考えさせられる、傑作娯楽映画。
■余談1:正義
本作をして「正義とは何かを考えさせられた」という文言を稀に見かけるけど、少し考えれば分かるけど本作では誰もそんなことは問うていない。ジョーカーだってそうだ。本作で問題になっているのは最初から最後まで人間が正義の代行者となることの難しさだ。だから、ジョーカーはあらゆる相手に「正義の代行者でいられない」状況を仕掛ける。デントはまんまとやられた。フェリーの件も上手くいくと思っていた*4が失敗した。そしてバットマンは、正義のために矜持を捨てた。
■余談2:中国のシーンいらないんじゃねーの問題
(・A・)イラナクナイ!
ビギンズからの路線変更に伴って、バットマンという存在を再定義する必要があったと思われる。さすがに駐車場のシーンだけではバットマンを紹介するにはスケールが小さすぎる。
■余談3:最後のジョーカー戦とソナーカメラ
最後のジョーカーとの戦いで、バットマンは暗いビルの各所で同時に展開される事態を把握して対処するために、街中の通信機の盗聴情報を元に周囲の状況を立体的に把握できる特殊なモニターを使用する。コミックの目が白塗りなバットマンをビジュアル的に再現したと思われる割と小粋なシーンだ。
で、このモニターを、ジョーカーとのタイマンが始まってからも使ってるのおかしくね? 的なツッコミを各所で見かけるので、俺の見解を書いておきたく。
余談なので結論だけ書くと、
- ジョーカーが真正面からタイマンしてくれると信じるとかそれ何のジョークよ
- あんなモニター長時間使ってたら絶対光が目に焼き付いてしばらく暗所に裸眼じゃ何も見えないって
と思うんだけど、いかがなもんだろう。