パシフィック・リム(Pacific Rim)(2013)

映画館で鑑賞後、ニコ動で無期限購入して再鑑賞。

童心に帰るってこういう事なんかねー。
初っ端のジプシー・デンジャー発進シーンは昔観た「ゴジラVSメカゴジラ」の冒頭シーン以上にシビれたし、躍動感たっぷりに暴れ回って容赦なく壊し合う巨大怪獣と巨大ロボットの格闘は昔の俺が本当に観たかった絵だったと思う。要所要所でガキの頃と同じくらい感動したし、それはつまりそれらのシーンがガキの頃に観た特撮映画より圧倒的に優れてたってことだろう。
やっぱり「容赦なく壊される」っていうのは大きい。冒頭、怪獣「ナイフヘッド」との戦いで、主人公機のジプシー・デンジャーはいきなり容赦なく損壊させられ、パイロットは引き摺り出され、必殺武器も狙って壊される。怪獣の強さ賢さと搭乗式巨大ロボットの脆さが最初に提示されたことで、以降の戦闘描写は見た目以上に緊迫感を帯びたと思う。
香港の戦いでも同じで、クリムゾン・タイフーンとチェルノ・アルファの敗北は単に負けたという以上に怪獣がどう怖いのかを雄弁に語る*1
怪獣の造形は着ぐるみ式の日本特撮怪獣に近いフォルムだけど、そこはCGなだけあって比較にならないくらい躍動していたのも、正直「怪獣を描くなら着ぐるみよりCGだなー」と思わされるものがあった。
エルボーロケットは言わずもがなのロケットパンチだし、香港都市部に攻め入るオオタチの姿はクローバーフィールドの怪獣を思わせたし、タンカーバットはキングジョーとか思い出すし、ビルに隠れての戦法は確か前のハリウッド版ゴジラがこんなことやってた気がするし、ブレストファイアーみたいなのもあるしとオマージュも(多分俺が知らないのも含めて)たっぷりでそういう意味でも面白かった。

■とはいえ……

とはいえ、傑作と言うには色々残念だったり惜しかったりする映画でもあったかと思う。
まず、映画館でもたまに思ったしニコ動で観た時はハッキリ思ったけど、まだCGの質は改善の余地があるように思う。もちろん、俺が着ぐるみの偽物っぽさに慣れてる程にはCGの偽物っぽさに慣れてないってのもあるんだろうけど。
また、色々目玉シーンを詰め込んでくれるのはいいんだけど、そのせいか1つ1つが「○○を思い出させる」以上に効果的ではないことが多かったようにも思う。
顕著なのがエルボーロケットで、文字通り肘部のロケットを使ってのフックはロケットパンチのオマージュで「おお」と思うけど、実際のところロケットを使わないと出来ないような速度や威力のパンチには全く見えなかったのでかなり不完全燃焼。直前のジャンプパンチの方が派手だし直後のコンテナパンチの方が効いてるように見える。格闘の中で効果的に繰り出した、というには溜めが長すぎたのもイマイチ。
中盤あたりで「深海にある裂け目に爆弾を運んで〜」みたいな作戦内容を聞いた時、「海の中で特殊作戦か……絶対終盤盛り上がんねーなコレ……」と思ったその通りに終盤が盛り上がらず、香港戦が最大のクライマックスになったのもまた残念。巨大なスラターンの登場は燃えたけど実際に戦う段になるとそれほど巨大さを感じさせなかったのも、まあ海の中って事なので予想通り期待外れ。
スラターン撃破後の展開に至っては、もう物語のベクトルを何処に持っていくつもりなのかサッパリ分からない展開になっていってグダグダ。「爆弾の代わりにジプシー自身が爆弾になる以上、裂け目を通ったらもう帰ってこれないのか……」と思ったらマコは普通に射出されて帰って来るし、「じゃあローリーが帰れるか帰れないかの瀬戸際でドラマがあるのか」と思ったらこちらも普通に脱出するし……もうわかんねえなこれ。多分危機感を煽る演出が足りなさ過ぎたんじゃないかと思う。

■なんだかんだ言って

そんなわけなので、この映画で巨大ロボット映画や怪獣映画が完成を見たとは全く思えないけど、現代の技術があればこれほどの物が作れるのかという夢は大いに感じさせられた映画だった。
あんまりヒットしなかったという話もあるのでひょっとしたらこれ(と来年のゴジラ)が最後になってしまうかも知れないけど、これが始まりになってくれたら嬉しい。
……。
……あ、もう正直日本の特撮はどうでもいいや。金ない上に伝統芸能気取りまで始めて、古参のファンの頭も硬直化してる状況で未来なんか無いっしょ。
パシフィック・リムが公開された時、何とかこれを「俺たちの」「日本の」手柄にしようと必死な人たちが色々言ってた気がするけど、逆立ちしたって日本には作れなかった映画だし多分今後もそう。

*1:語り過ぎて逆に「もうこれジプシーが勝つしかないじゃん……」っていう最近のはじめの一歩みたいな状態になったのはどうかと思ったけど。