ゴジラ(1954)

VSがリアルタイムでその後ほとんど深追いしてなかったゴジラシリーズの原点をBD鑑賞(買ったのも観たのも少し前)。

【東宝特撮Blu-rayセレクション】 ゴジラ(昭和29年度作品)

【東宝特撮Blu-rayセレクション】 ゴジラ(昭和29年度作品)

新しくて画質が良い方はそれ故に映画館では気にならなかったであろう作り物感までハッキリ見えてしまう……的なことを書いてあったのを見て、何となく身に覚えがあるので敢えて古い方のBDを買って観たわけだけど、観終わった今となっては「どうせこれなら新しい方買えばよかったな……」。
(映画に限らず)古い作品、特にあるジャンルの原点になったと言われるような作品は、大抵の場合後に優れた模倣が出まくったことで後追いで観るとショボイと感じたり新鮮味を感じられなかったりすることが多くて、後追いの追随を許さないものが極一部あったりするけど、このゴジラについては残念ながら全体としては前者のように感じることが多かった。初代ゴジラについてはその手の前置き抜きで「素晴らしい」とだけ評する向きが多かったように思うし、そういう期待が大きかったのでこの点は残念。特撮に目をやれば「こう撮ってるんだろうな」っていう作り物感がどうしても先行するシーンが多いし、物語もストーリーラインだけ見れば見慣れた怪獣物の更に一捻り足りない版みたいな内容。
まあ、古いから仕方ないし原点だから仕方ないんだけど、そういう「〜だから」っていう但し書きがないとしょっぱく見えることがある映画であるという感想や評がもうちょい目立ってても良かったんじゃないか。
……ただ、ゴジラが東京に上陸する辺りに限っては話が別。
東京を文字通り火の海に変え、その中を無表情に蠢くゴジラの画には、俺が観た他のどのゴジラ作品にもなかった別格の迫力があったし、戦車と対峙するシーンで観られた怪談物の妖怪(?)みたいな妖しい存在感もまた独特*1
なにより、ゴジラに街を蹂躙される人々の絶望がこの辺りのシーンには感じられて*2、それに比べると俺が観てきた怪獣映画では街は襲われてなんかいなくて、ただプロレスリングになってただけだったように思う。
何がそう思わせるのかは分からないけど、多分この映画特有のパワーなんだろうなぁ。正直この辺のシーンが観られただけでこの映画に関しては満足。
で、その別格の怪獣に対して最終的に用いられるのが芹沢博士による新兵器「オキシジェンデストロイヤー」なわけだけど…………ぶっちゃけこれって『核兵器』だよね。
途中に説明があった通りこれを使った事で周辺の海生生物って間違いなく死滅してるわけだし、平和利用のため以外には解禁されるべきではないはずのその力は、現に怪獣ゴジラを死滅させるために用いられたわけで。確かに人間に対しては用いられなかったけど*3、じゃあゴジラになら使っていいっていう論理はどこから出てきたのか、と考えだすと、本質的に核兵器と差があるようには思えない。結果的に二度と使われないように封印された事も、他ならぬ芹沢博士自身が使うことに首肯したことを思えば「核とは違う」という意味を成すようにも思えない。
となると、理屈の上ではこの映画は戦争を終結させるために(という建前で)核兵器を使用するっていう行為をむしろ肯定してるように思えてしまう。
ただ、「他国が行った核実験の被害を日本が受ける」っていう理不尽な状況やそれに対する恐怖・絶望、そして「オキシジェンデストロイヤー(=核兵器)を命懸けで永遠に封じる」っていう展開には、理屈はどうあれ戦争被害や核兵器の存在への恐怖や嫌悪が確かに刻まれてるとも思うので、そういう意味でこの映画は正しく「反戦反核映画」なのかも知れない。
名作だと思う、でも、もうちょっと全編通して見劣りせずに観られる作品であってほしかった……が正直な感想。

*1:初代ウルトラマンの夜間戦闘シーンに雰囲気近かった。あれも好き。

*2:戦後復興の最中に襲われたっていう、泣きっ面に蜂なシチュエーションも効果というか影響大かと思う。

*3:いや、約1名モロに食らったけど。