『ULTRAMAN BEGINS 2011』より、宇野常寛→清水栄一×下口智裕インタビュー

先日、遂に月刊ヒーローズ(HERO'S)が創刊された。
ぶっちゃけ興味があったのは『ULTRAMAN』だけで、実際それしか読んでないんだけど、超面白かったすな。まぁ、決定的なことはまだ何も起きてないんだけど、正直かなり燃える第1話だった。
で、他の評判を主に2ちゃんとかで見てみると、スロースターターっぷりへの否定的な意見とかあって、まぁそれは分かるといえば分かるからいいんだけど、『ULTRAMAN』第1話あとがきへの批判なんかもあって、「これはまずいな……」とか思ったりしたんよね。
俺はコミケに行った知人id:Dryad先生どもすー。)に『ULTRAMAN BEGINS 2011』をもらってきてもらって事前インタビューを読んでたからいいんだけど、あれを読んでない人には実際あの後書きって「奇を衒ってみました(ドヤッ」っていう内容にしか見えない気がして、「ちょっと待てよ」ということで、『ULTRAMAN BEGINS 2011』に載っていた宇野常寛氏による清水栄一×下口智裕コンビへのインタビューを全文掲載してみた。
あの後書きから受ける印象より、ウルトラマンというシリーズを真剣に受け止めた上でのアレらしいよ、的なアレが伝わるといいなぁ。

■インタビュー全文

清水栄一×下口智裕 2011年、
新たなウルトラマンが誕生する。


「等身大で、スーツを着て戦うウルトラマン」…伝説のヒーローを引き継ぐ著者の心情を、同年代の『特オタ』評論家、宇野常寛が聞き出す。



同年代の『特オタ』は
珍しいかも



――僕はお二人とは同じ歳で、この世代では珍しい特撮オタである、という巡り合わせで、今回インタビューをさせていただくことになりました。清水さんと下口さんが今ウルトラマンをやるって、衝撃的なことだと思うんですよ。「こう来たか〜!」って。多分、特オタのみんなは「『Hybrid Insector』*1が最近更新されないと思っていたら、まさかこんなことになっていたとは」という感じで、衝撃を受けると思うんですよね。お二人は、『鉄のラインバレル*2が代表作で、『Hybrid Insector』などもあって、ロボットやヒーローものがすごく好きだろうし、他の談話とかでもアメコミに対する思い入れなどがあったと思うんですけど、案外、ウルトラマンとかに対する言及というのはそんなに見たことがないと思うんですが。


清水 ウルトラは特別すぎて、どう言及したらいいのかわからないんです。だから、一切ホームページのトップ絵とかにもウルトラマンは描いてないです。コラムとかでも、ウルトラマンには触れていない。わかる人にはわかると思うんですけど、ラインバレルが結構ウルトラネタを入れているんで、そこで、ウルトラマンも好きなのはわかるだろう、というのはあります。


――ガジェット単位で、円谷テイストが『鉄のラインバレル』には入っていますよね。


清水 そうですね、結構ちょこちょこ入れて、気づかれるものもあれば、気づかれないものもあります。今まであからさまにウルトラマンに言及してこなかったのは、完全に、「特別だからこそ、どう触れていいかわからなかった」という理由です。


――僕らの世代って、特撮オタクってあんまりいないじゃないですか。


清水 いないですね。下口も、もとは全然興味ありませんでしたから。

下口 そうですね。清水と出会った頃は、僕はまったく特撮に触れてない人間でした。

清水 彼は典型的なタイプでした。特撮=子供の見るものという認識だった。


――僕らの世代は大体そうですよね。特撮はもう完全に、未就学児童が見るものという考え。


清水 ちょうど抜けちゃっているんですよね。


――ウルトラもライダーも、劇場とかオリジナルビデオとかVシネとかで、細々とやっていた世代。80年代だと本当に戦隊と宇宙刑事しかなくて、ウルトラもライダーも両方ともなかったですしね。


清水 僕は、幼少期は大阪にいて、再放送でガンガン特撮をやっていたので、普通に見ていました。子供のときって、再放送なのか、オンタイムなのか、わからないじゃないですか。普通に『ゴレンジャー』もやっていたし、そういったものを当たり前に見ていました。逆に新作っていうものには触れてないんですけど、再放送でずっと、『ウルトラマン』とか『ウルトラセブン』を見ていました。なので、子供の頃に60〜70年代の昭和特撮を見てハマっていった…という感じですね。だからロボットも、昔の作品のほうが自然に普通に触れていました。そのまま卒業せずに成長して今に至る、という感じです。


――お気に入りのもの、これが特に好きだったっていうのはありますか? 幼少期に触れた昭和特撮で。


清水 子供の時にとにかく好きだったのは、やっぱり、初代ウルトラマンですね。


――セブンよりマンの方が好きなんですか?


清水 そこは微妙なんですよ(笑)。ちょっと別扱いです。作品として好きなのはセブンなんですよ。ただ、ウルトラマンの持つかっこよさっていうのは、またちょっと違う。


――ビジュアル的なショックっていうんですかね。


清水 僕の中で、見ている感覚が、ロボットと変わらなかった。大きくてそれなりに人のシルエットをしているというのが、巨大ロボットと変わらなくて好きだったんです。逆にセブンからは、巨大ヒーローみたいな認識がありました。セブンは等身大になったりもしますし。


――あと、ハヤタってウルトラマンに変身したら、人格が一回オフになっちゃうじゃないですか。宇宙人の人格になっちゃう。けど、ウルトラセブンは単に赤い宇宙人が、モロボシ・ダン森次晃嗣)に化けているだけ、みたいな。


清水 そうですね。そういう意味でも、自分の中で感覚がちょっと違うんですよ、マンとセブンでは。

巨大なものへの執着


――下口さんは逆に、同年代で、全然特撮に触れていなかったんですよね。カルチャーショックだったんじゃないですか?


下口 清水と出会ったばかりの頃(コンビを組む以前)、趣味の話をしていたときに、「何を見てきたか?」っていう話の中で、清水から「特撮」っていう話を聞いて、「え? 特撮?」って(笑)。「子供の見るものでしょ?」みたいな感じでした。それで清水はカチンと来たのか、家に遊びに行ったときにビデオで見せられたのが、平成ガメラ*3だったんですよ。しかも2です。


――平成ガメラ2! 一番いいじゃないですか。


下口 僕が派手好きな性格なので、派手でかっこいい画面に食いつくと思ったんでしょうね。でも本当に見出したら、「おお、すごい」って思いました。そこで巻き戻して、最初からまた見て、と繰り返して、「他にないの?」って(笑)。それで見せられたのが、ウルトラセブンでした。

清水 あれは単にアンヌを見せただけだよ(笑)。どうだ、かわいいだろって。確か、「ノンマルトの使者」*4だった。


――「ノンマルトの使者」見せたんですか? 水着の回ですよね。あんな話なのにサービスカットがあるんですよ(笑)。


下口 そうなんです(笑)。たしか、そのときも清水は、巨大なものっていうのにとにかく執着があるっていう話をずっとしていました。それこそウルトラマンもそうですし、ロボットもそうなんですけど。


――エピソード単位で昭和ウルトラマンで好きだったのはありますか?


清水 初代だと、本当にショッキングだったのはやっぱり最終回ですよね。今見ても、「いいなー」って思います。ウルトラマンが倒してないじゃないですか。


――ペンシル爆弾ですもんね。


清水 今見ても、「最終回でこれやるってすごいよな」って思っちゃうんですよ。普通だったら、最後にウルトラマンが奇跡の復活を遂げて、ゼットンを倒して「ワーッ!」っと大団円で終わる、という風になると思うんですよね。
その前の話で、イデ*5が迷ったりしているじゃないですか。結局、ウルトラマンがいたら自分たちの存在は、って……あれをやった上での最終回なので。


――そうなんですよ、最後の最後で、作りやすさよりもテーマを優先して、「エイヤッ!」ってやったのが多分、あれなんですよね。


清水 だから、今見ても最終回はいいなって思います。最終三話くらいから、全部いいな、と。でも、何回も見返した話はやっぱり、第一話なんですよね。一話は本当に大好きです。大人になってから元ネタがあるのを知ったんですけど、それを知らない頃は「完璧だ」と思っていたんですよ。「巻き込まれて死んで、命を与えられる」という、ヒーローになる過程が。自分たちの作品でもほぼ同じ一話があるんですが(笑)。

洗練された怪獣デザインに
影響された部分


下口 清水と知り合った当初は、聞いている怪獣の名前は全然わからなかったんですけど、ベムラー*6だけは別でした。初めて第一話を見たときからずっとベムラーが好きです。全部、清水の刷り込みですけど(笑)。おもちゃも、ベムラーが出たら買ったりとかしていました。

清水 僕は本当に好きなのは、劇中のではなく、成田亨*7さんの描いたエレキング*8


――成田さんのビジュアルイメージってやっぱりすごいですよね。あれって、日本文化のビジュアルイメージ自体にすごく影響を与えていると思うんですよ。


清水 大人になって、ようやく成田さんの画集を買えて、それを見たときの衝撃は半端じゃなかった。もう、嫉妬しかなかったですよ。「自分がどうやっても、絶対にここにはたどり着けない」っていうのを、まざまざと見せられたので。


――例えば、石ノ森章太郎*9さんって、最高のキャラクターデザイナーのひとりだと僕は思うんです。そして彼の優秀さっていうのは頭の良さに近くて、コンセプトがはっきりしている。要は昆虫とか植物の仮面をかぶることで、人間の体をしているんだけど、自意識がないものですよね。だから、半分生命で半分機械というモチーフが多い。でもそれとはまた違った成田さんの良さがある。単純にタコが膨らんでいる、エリマキトカゲがでかくなっている、でもそのものでもない。よくわからないモチーフもあるし、現実の生物がそのままでかくなっているんだけどちょっと変わっている、というのもある。割り切れないんですよね、彼のデザインって。


清水 芸術家っていうのがでかいのかなって思うんですよ。誰もがここには絶対たどり着けないんじゃないかって、思っちゃうんですよね。ウルトラマンのデザインひとつ取っても、やっぱり奇跡だと思います。

下口 ヒーロー然としているんだけど、どこか工業チックだったりとか、ただ単にキャラクターとして描いているというか。絵そのもの自体が、かっこいいんですよね。

清水 だって、「メカがわからない」って言って、ウルトラホークとかマイティ号をデザインするんですよ(笑)。成田さんの、デザインする上での制約みたいなものっていうのは、僕も影響を受けています。守っているのは、左右非対称をやらないというところです。それだけは、ロボットだろうがなんだろうが守っています。

仮面ライダーに見習うところ


――21世紀に入ってからの(平成の)特撮で、お好きな作品はありますか。


清水 本当にショックを受けたのは、『仮面ライダー龍騎*10でしたね。クウガ、アギトっていうのはまだ、正当なデザインとして認識していて、それでいきなり龍騎がきたから、驚きました。予告を見た当時、下口に電話して、「次のライダー、『ビッグ・ザ・武道』みたいだぞ」って報告をしました(笑)。騎士というよりも、パッと見たあのスリットが、剣道のお面みたいに見えたんですね。楽しみというよりはむしろ、本当に興味本位で、「これをどうやるんだろう?」って思っていました。しかも13人ライダー出るっていうし。でも見たら、全然イメージが変わりましたね。


――僕も、龍騎は最初、「これどうするんだろう?」と思って、むしろ不安だったくらいですけども、放送始まったら、すんなりとハマりましたね。


清水 一話が上手かったですね。一話の冒頭で、城戸真司*11という主人公をたたせたので。城戸真司という存在が、どういう人間なのかっていうのを、多分、一行ぐらいの文章、台詞で表現していた。


――僕も平成の初期は一番ショックだったし、いまだに好きですね。龍騎ファイズ、ドラマ的にはアギトも好きです。


下口 クウガの最後が納得いかないって言って、一回、見るのを辞めたんですよ。

清水 だからアギトは、実は見てないんですよ。クウガの最終回、というか五代雄介*12の扱いが許せなくて。


――クウガって、高寺重徳*13さんが、平成ガメラとかパトレイバーの遺伝子を受け継いでいる作家であることを証明した作品でもあるし、それを貫徹せずに、恐らく彼が理想とする五代雄介というキャラクターを描くことに執心してしまった作品でもありますね。ほとんど後半は説教番組になっちゃう。家出した少年とか探して連れ戻したりして、「それってヒーローの役目なのか?」ってところまでいっちゃう。


清水 途中まではすごく夢中になっていたんですけど、やっぱり五代雄介の扱いが…。


――説教臭くなって、やたらとみんなから褒められますからね。


清水 そんなくせして、「最後なにも失ってないじゃん」って思っちゃって。

下口 それを真逆にやったのが龍騎でしたね。龍騎の最終話前に、城戸真司が死んで…。


――あの回は本当にね、神ですよ!! 僕もう、本当に、テレビの前で愕然としました。


下口 しかもライダーとして死ぬんじゃなくて、城戸真司として死ぬっていうのが、衝撃的でした。でもあれは、ヒーローの描き方としては、すごく正当に見える。壮大な前置きがあって、結局はあいつ一人がんばって、ライダーバトルを止めるだなんだって言っても、最終的には女の子一人守るために、人間のまま死んじゃう。こう言うのもなんですけど、ドラマとしてすごく完璧だなって思っちゃう。

清水 本当に龍騎はすごいですね。あのときのスタッフのいろんな想いでできているんだと思います。

「新しいウルトラマン」は、
批判も含めて、全部自分たちが
受け止める


――お二人が手がける、新しいウルトラマンですが、僕も第一話のコンテを読ませてもらいまして、非常に興奮しました。最初、ウルトラマンというオファーを受けて、どう思いましたか?


清水 実は最初は、『Hybrid Insector』の企画で動いていたんです。それがちょっといろいろあってなくなり、そしたら担当さんから「ウルトラマンの企画がある」と言われたんです。でもそのときは、断るつもりだったんですよ。ウルトラマンを漫画でやるっていうリスクはすごく大きいというのもあるし、「こっちが好き放題描いてもいいなら」という条件を出しても、たぶん無駄だろうと思っていましたし。だから、最初は断るつもりだったんです。その話が来る前にも、ウルトラマンの話をしていて「どんなものが新しいウルトラマンだと思いますか?」って聞かれて、でももうウルトラマンの新しいものなんて考えつかなかったんですよ。破壊するしかない、でもどこを破壊すればいいかもわからない。でも、担当さんの方から「等身大でスーツを着るウルトラマンで」って言われて、その瞬間「やりたい!!」と思ったんです。間違いなくウルトラマンアイデンティティーを破壊しているので。


――完全に破壊していますね(笑)。


清水 たぶんそれだったらなんか面白いことができるかもしれないと思いました。なので、「等身大」って聞かされた時点で、やりたいですってすぐ答えたんです。で、そこからはもう、かなりオリジナルのウルトラマンとして作りました。

下口 ウルトラマンを破壊するとしたらどこか、というのは、以前からずっと話していました。ウルトラマンはTVシリーズが止まってしまいましたけど、仮面ライダーはずっと続いている。やっぱりその理由には、デザインの破壊があったりもする。毎年毎年、ビックリするようなライダーが出てくるんですよね。「ああ、これも続いている理由の一つなんだな」と思うと、やっぱり破壊をしなきゃいけないというのは、ウルトラマンにもあるように思います。
最初、「ウルトラのオファーが来た」って清水から聞いたとき、「受けるつもりないでしょ?」って言ったら、「受ける」って言い出して(笑)。「どうしたの?」と思ったら、「等身大だよ」って言われて、それだったら僕もやりたいと思いました。

清水 ウルトラマンをこの先続けていくためには、壊さなきゃいけないところがいっぱいあると思うんです。仮面ライダーもそうなんですけど、まだまだ壊すところというのはいっぱいあるとは思うんですが、ただ闇雲に壊せばいいわけではない。等身大でスーツを着たウルトラマンっていうのが、実際世に出たときにどういう反応(批判)を受けるかっていうのは、容易に予想はつくんですけど、じゃあ「小っちゃかったらウルトラマンじゃねーのかよ?」っていうのを、ぶつけられればいいかな、と。「結局ウルトラマンがでかい理由って、円谷プロが作ったからでしょ?」というのもあると思うし、あとは、怪獣がでかいから同じ大きさ、とか。刷り込みで巨大ヒーローっていうのがずっとあっただけで、時には別に小っちゃくたっていい。セブンだって、ミクロまでいくし。そう考えたときに、等身大のウルトラマンというのは、「なんで誰も考えつかなかったんだろう、こんなに単純なことなのに!」って思ったんですよね。僕もずっとウルトラマンが好きで、「新しいウルトラマンって何ができるんだろう?」って考えていたんですけど、等身大にするということには、まったく気づかなかったんですよね。逆にそれを提示されたときに、「こんな単純なところにあったんだ!!」って、ビックリしました。あと、もしこれを他の漫画家さんがやって、それを見るのは嫌だなっていうのもありました。やるなら、批判も含めて全部僕らが受け止めるから、自分たちがやりたいっていう気持ちが強かったです。ちょうどアメコミが好きで、そういうテイストも含めるというのも最初にありましたし。
初めて出した新ウルトラマンのイラスト案は、アメコミヒーローぽく、わかりやすく、ビルの上に立っている姿で…。


――あれは衝撃的でした。


清水 等身大にしてデザインするんだったら、ものすごくデザインに悩んで時間がかかって、辛い道のりが待っているんだろうなと思っていたんですけど、あのイラストは5分ぐらいでできたんですよ。下口とSkypeで話しながら打ち合わせをしているときに、肩に力も入らず、ささっと描けました。「こんなんどう?」って見せたら、「あ、いいじゃん」って言って(笑)。そこから詰めていきました。

下口 何かを壊さなきゃいけないって話していたので、最初はやっぱり、「トサカをなくしたりしよっかな」みたいなことを言ったりもしていたんですけど、素直にああいう形になったんです。いかに小っちゃかろうがこれならいけるなって思いました。

ウルトラマン、まず最初の
エピソード展開は?


――初代ウルトラマンって、放送当時の、日本にとってのアメリカを象徴しているようなもので、なにか外側からやってくるすごく強力なものを、我々がどう受け止めるかというのが、昭和ウルトラの、特にマンのテーマだったと思うんですよね。今回の新ウルトラマンの一話のコンテを読んだときに、まさにそれを受け継いでいるなと思ったんですよ。


清水 新しいウルトラマンのテーマというか、これをやらなきゃいけないんだっていう着地点が見えたのは、実はここ最近なんです。敵ひとつとっても、最初はものすごく悩んで。単に、ウルトラマンの敵がウルトラマンというのはつまらないし。それは平成も含めて仮面ライダーでやっているじゃないですか。


――それは平成ライダーでやっていますからね。仮面ライダーって、内在的じゃないですか。ショッカーの怪人が一人脱走しただけで、言ってみれば内ゲバの話ですよね。
一方ウルトラマンは、やっぱり大宇宙からやってきた超人なんで、超越的である。そこさえ外さなければ、別に大きかろうが、小さかろうが、どっちでもいいと思うんですね。


清水 そうですね。だからこそ、主人公がウルトラマンスーツを着て、初めてウルトラマンになるところはしっかり描かなくてはいけないと思います。これまでのウルトラマンの成り立ちとは全く違うワケですし。

第1話は、新しい歴史を
うまく始めている


――お世辞じゃなく、この第一話は、僕が予想していたものよりずっと面白かったんですよ。ちょっと上から目線ですけど、どこが面白かったかというと、その昔ウルトラマンがいて、その頃は高度成長に裏付けられた「科学の作る明るい未来」というイメージがまだ有効で、冷戦を背景にした政治的な緊張感がまだあって、でもそれは全部過去のもので、でもそこから出発しなきゃいけないんだなっていうことを、すべてビジュアルで表しているんですよね。登場する建物やガジェットを通してまさに今、ウルトラマンをやり直すことがどういう意味かっていうことが、この66ページにほぼ描かれていると、僕は感じました。日本において怪獣というのは、要は軍隊の比喩で初代「マン」も安保体制の寓話だった。けれど今、怪獣のような巨大な暴力やウルトラマンのような超越的な存在を捉えるときは全く別の道具立てが必要なんだということが、ストーリーというよりは、ビジュアルとか設定ですごく雄弁に語っている。これは正直、「参ったな」と思いましたね。


清水 ありがとうございます。ちょっと、一話から敷居が高いのかなっていう心配がずっとあったんですが…。


――いや、この一話を見たら、みんなすごい期待しますよ。ウルトラマンをもう一度やり直す、という全体的な意識というのは、今回の第一話が全て語っている。やっぱり、ビジュアルと設定で見せているっていうことが、漫画でやることの意味だと思うんです。本当に、作画の仕上がりも非常に楽しみです。


清水 ありがとうございます。でも、巨大なものに執着があると言う話をしておきながら、等身大のウルトラマンを描くというのは矛盾している様に聞こえますよね。

下口 お前どっちなんだよ! みたいな(笑)。

*1:清水×下口公式HPにて不定期連載中の二次創作作品。

*2:チャンピオンRED」(秋田書店)にて連載中のロボット漫画。2004年連載開始、2008年TVアニメ化。

*3:ガメラ2レギオン襲来』1996年公開。宇宙からやってきた怪獣レギオンとの戦いを描く。

*4:突然現れた少年が、「地球の先住民族はノンマルトで、人類は侵略者である」と言い出す。地球を汚す人類に対しての警鐘か…。ダンとアンヌがビーチでデートするシーンも。

*5:科特隊の開発担当者。武器などを開発する発明家。「ウルトラマンがいれば、科特隊は必要ないんじゃないか」という苦悩を持つ。

*6:第1話で、地球に迷い込んだ怪獣。それを追ってきたウルトラマンとハヤタがぶつかり、ハヤタは命を落とす。

*7:ウルトラマンのデザインを担当。ウルトラシリーズでは多くのデザインをてがける。

*8:最初の登場は『ウルトラセブン』第3話。

*9:漫画家。仮面ライダーシリーズの原作者。

*10:2002年放送開始。平成ライダーシリーズ第3作。

*11:仮面ライダー龍騎の主人公。見習い記者。カードデッキを拾ったことによりライダーの戦いに巻き込まれる。

*12:仮面ライダークウガ』の主人公。冒険家。遺跡でベルトを発見、装着し、変身能力を持つことになる。

*13:仮面ライダークウガ』や『仮面ライダー響鬼』のチーフプロデューサーを担当。2006年、東映退社。