【確率・統計っぽい】バレーボールの勝ち点制についていい加減に考える

掲題の通り。
今やってるバレーボールのW杯では、勝ち点制が導入されているらしい。5セットやって3セット先取で勝利なんだけど、セットの獲得状況によって以下のように勝ち点を与えるそうな。

勝ちチーム
取得セット数
負けチーム
取得セット数
勝ちチーム
勝ち点
負けチーム
勝ち点
3セット 0セット 3点 0点
3セット 1セット 3点 0点
3セット 2セット 2点 1点

で、まぁ詳細はここを見てもらえばいいんだけど、フルセットの場合に負けチームにも勝ち点を与えるもんだから、勝ち数の多いチームが勝ち点で負ける、というケースが生じているようで、これはおかしいんじゃないかとの声が上がっているとかいないとか。
で、↑のリンクの通り俺はそんなに問題ないんじゃないかと思ったんだけど、ちょっと気になったので調べてみることにした。
掲題の通り色々いい加減で見る見る信頼性が下がっていくので、お遊びと思って見てもらえれば。

■1. 「一定の確率でチーム1が、残りの確率でチーム2がセットを取る」と考える

「チーム1とチーム2は『60%の確率でチーム1がセットを取り、40%の確率でチーム2がセットを取る』ような力関係である」と仮定する。それなりに実力差があるように見えるね!
この仮定でどちらかが3セットを取るまで試合を続けた場合、どのようなセット取得状況がどれだけの確率で発生するのか。計算がめんどいのでシミュレーション*1してみると、こんな感じになる。

結果 3-0 3-1 3-2 2-3 1-3 0-3
回数 438 485 450 300 212 115
確率 21.90% 24.25% 22.50% 15.00% 10.60% 5.75%

要するに、チーム1の方が強いのに負けてしまう確率が31%ほどあるということになる。3セット先取制ではこの程度の実力差を浮き彫りにするには不十分なわけだ。

■2. 実力差を41通りに分けて考える。

で、考えられる全ての実力差について、↑のようなことを調べてみる。ある程度細かい方がいいよなーとか考えた結果、 0:40 → 1:39 → …… → 39:1 → 40:0 までの41通りについて考えることにした。0:40だと、前者チームはまったくセットを取る見込みがないことになる。40:0はその逆。
で、これらについてシミュレーションを行なった結果が以下の通り。

  3-0 3-1 3-2 2-3 1-3 0-3
40:00 2000回 ---0回 ---0回 ---0回 ---0回 ---0回
39:01 1855回 -136回 ---9回 ---0回 ---0回 ---0回
38:02 1723回 -246回 --29回 ---0回 ---2回 ---0回
37:03 1565回 -381回 --42回 ---7回 ---3回 ---2回
36:04 1468回 -435回 --80回 ---3回 --12回 ---2回
35:05 1325回 -507回 -137回 --13回 --12回 ---6回
34:06 1244回 -533回 -169回 --25回 --18回 --11回
33:07 1095回 -594回 -232回 --47回 --25回 ---7回
32:08 1082回 -589回 -231回 --52回 --32回 --14回
31:09 -928回 -629回 -269回 --93回 --60回 --21回
30:10 -843回 -640回 -309回 -109回 --76回 --23回
29:11 -758回 -619回 -351回 -137回 --88回 --47回
28:12 -657回 -626回 -385回 -161回 -121回 --50回
27:13 -628回 -608回 -401回 -165回 -129回 --69回
26:14 -547回 -570回 -401回 -236回 -163回 --83回
25:15 -456回 -572回 -405回 -260回 -208回 --99回
24:16 -438回 -485回 -450回 -300回 -212回 -115回
23:17 -373回 -471回 -430回 -311回 -277回 -138回
22:18 -322回 -431回 -395回 -350回 -310回 -192回
21:19 -272回 -404回 -414回 -362回 -327回 -221回
20:20 -243回 -377回 -402回 -359回 -373回 -246回
19:21 -206回 -343回 -363回 -366回 -421回 -301回
18:22 -197回 -295回 -328回 -431回 -428回 -321回
17:23 -139回 -308回 -315回 -396回 -466回 -376回
16:24 -149回 -188回 -297回 -404回 -523回 -439回
15:25 -100回 -207回 -240回 -426回 -546回 -481回
14:26 --82回 -160回 -224回 -397回 -618回 -519回
13:27 --61回 -142回 -212回 -417回 -603回 -565回
12:28 --48回 -110回 -155回 -356回 -649回 -682回
11:29 --38回 --94回 -140回 -344回 -620回 -764回
10:30 --36回 --65回 -123回 -317回 -660回 -799回
09:31 --22回 --57回 --65回 -284回 -636回 -936回
08:32 --19回 --46回 --70回 -228回 -613回 1024回
07:33 --12回 --29回 --52回 -189回 -584回 1134回
06:34 --10回 --16回 --30回 -148回 -569回 1227回
05:35 ---3回 --14回 --14回 -123回 -514回 1332回
04:36 ---0回 ---2回 ---4回 -101回 -442回 1451回
03:37 ---1回 ---1回 ---9回 --58回 -335回 1596回
02:38 ---0回 ---0回 ---2回 --28回 -262回 1708回
01:39 ---0回 ---0回 ---0回 ---5回 -166回 1829回
00:40 ---0回 ---0回 ---0回 ---0回 ---0回 2000回

これをまとめると、3-0、3-1、3-2はそれぞれ以下の確率で出現していることになる。

セット数 3-0 3-1 3-2
回数 41775回 24033回 16192回
確率 50.94% 29.31% 19.75%

■3. で、実際のところ、各セット数ってどんな感じで出てるの

ここで第3ラウンドまで結果が出てたので、数えてみた。結果は以下の通り。

セット数 3-0 3-1 3-2
回数 31回 10回 7回
確率 64.59% 20.83% 14.58%

↑のシミュレート結果より、3-0が多く出ている。実力の拮抗している場合が多いほど3-2が出やすくなるので、■2.で全ての実力比を均等にしたのは誤りで、拮抗している場合を減らす必要がある。

■4. 逆正規分布

中央ほど多いなら正規分布を使えばそれっぽくなりそうだけど、中央ほど少なくするので正規分布を逆さに使用して、それぞれの場合の出現確率とする。
で、まぁ係数を色々弄って、以下のようにしたところで確率値が実測値に近くなった。

実力比 確率before 確率after
40:00 2.50% 5.00%
39:01 2.50% 4.75%
38:02 2.50% 4.47%
37:03 2.50% 4.19%
36:04 2.50% 3.90%
35:05 2.50% 3.61%
34:06 2.50% 3.31%
33:07 2.50% 3.01%
32:08 2.50% 2.72%
31:09 2.50% 2.43%
30:10 2.50% 2.15%
29:11 2.50% 1.89%
28:12 2.50% 1.64%
27:13 2.50% 1.41%
26:14 2.50% 1.21%
25:15 2.50% 1.03%
24:16 2.50% 0.88%
23:17 2.50% 0.76%
22:18 2.50% 0.68%
21:19 2.50% 0.62%
20:20 2.50% 0.61%
19:21 2.50% 0.62%
18:22 2.50% 0.68%
17:23 2.50% 0.76%
16:24 2.50% 0.88%
15:25 2.50% 1.03%
14:26 2.50% 1.21%
13:27 2.50% 1.41%
12:28 2.50% 1.64%
11:29 2.50% 1.89%
10:30 2.50% 2.15%
09:31 2.50% 2.43%
08:32 2.50% 2.72%
07:33 2.50% 3.01%
06:34 2.50% 3.31%
05:35 2.50% 3.61%
04:36 2.50% 3.90%
03:37 2.50% 4.19%
02:38 2.50% 4.47%
01:39 2.50% 4.75%
00:40 2.50% 5.00%

セット数 3-0 3-1 3-2
確率 64.82% 23.43% 11.75%
実測値 64.59% 20.83% 14.58%

■4. 各セット数状況について「実際には相手の方が強い確率」を求める

前述の■2の表に■3の表の確率を掛け合わせた表を用意し(スペース食うので略)、各セット数状況について実際の実力差と逆の結果になっている確率を求めると、以下のようになる。

セット数 実力通り 実は互角 実力の逆
3-0 97.93% 00.23% 01.84%
3-1 88.78% 00.97% 10.25%
3-2 70.56% 01.96% 27.48%

■5. 各確率に等しい割合で、勝ち点3点を割り振ってみる

もう大体結論が見えてきそうな数字になってきたけど、ここから「実は互角」を除いて、確率に等しい割合で勝ち点3点を割り振ると、以下のようになる。

セット数 実力通り 実力の逆
3-0 2.945点 0.055点
3-1 2.690点 0.310点
3-2 2.159点 0.841点

見ての通り、【3-0】【3-1】は3点:0点、【3-2】は2点:1点で割り振ることで、両チームに対して「『本当は実力が上』である確率」に近い得点を与えることができる、と言えるんじゃなかろうか。

■雑感

ブコメにも書いた通り、引き分けが存在しない以上フルセットはセット数だけ見れば実質引き分けなわけで、勝ち点を敗者に分配するルールにもそれなりの妥当性があるとは思ってたわけだけど、物凄く単純化したモデルで見ると3-2の時に実際は敗者の方が実力があった可能性が3割弱ほどあるということになったので、意味があるのか分からないほど荒っぽい調査だけどそれなりに妥当である可能性を見出せたんじゃなかろうか。
駄目?

*1:今回のシミュレーションは、全ケースについて2000回ずつ行なった。少ないね!