『スローンとマクヘールの謎の物語』(及びその原典であるところの問題集)の駄目さと『ウミガメのスープ』

先日、ニンテンドーDSのゲーム『スローンとマクヘールの謎の物語』をクリアした。

スローンとマクヘールの謎の物語

スローンとマクヘールの謎の物語

有名な『ウミガメのスープ』を始めとする、『ウミガメのスープ』と同形式の問題を全80問を遊ぶことの出来るゲームで、TRPGとか人狼とかウミガメみたいな、人間がいないと絶対に成立しないと言われがちなゲームのスタンダロン化を試みている点で面白そうだったので、購入してみたのが一週間くらい前。

■そもそも『ウミガメのスープ』って何なのか

下手にぐぐると正解を見てしまって、大きな楽しみの一つを失ってしまうこと請け合いなので、ここで説明(後で思いっきりネタバレするんだけど)。
ウミガメのスープ』とは、ウミガメのスープにまつわるあるエピソードに関するクイズ。大雑把には以下のような問題文となる。

ある日、男がレストランを訪れ、ウミガメのスープを注文し、一口食べた後、レストランを出て、自殺してしまった。
男は何故自殺してしまったのでしょう。

当然、これだけを読んで答えが分かるわけもなく、『ウミガメのスープ』では、通常のクイズとは異なる以下のルールに基づいて解答を探ることになる。

  • 回答者は、出題者に対して「YES」「NO」で答えられるあらゆる質問を何度でもしてよい。
  • 出題者は、全ての質問に正確に回答する(隠し事はしない)
  • (ただし、正解に記述のない内容に関する質問には「関係ありません」などと答える場合もある)

問題文から想像力を膨らませて質問を考え、回答を得ることで正解(=真相)に辿り着くのが、『ウミガメのスープ』というクイズ、というかゲームの目的となる。
また、この『ウミガメのスープ』以外にも、同様の形式で解くことを想定した問題は多く作成されており、前述の『スローンとマクヘールの謎の物語』も、そうした問題をまとめた書籍を原典としている。
想像力を働かせ、質問を繰り返して背景を探るのがキモであるため、頭を働かせれば一発で正解できるような問題はむしろ駄問と言える。

■『ウミガメのスープ』のコンピュータゲーム化『スローンとマクヘールの謎の物語

上記のようなクイズをゲーム化するに当たっては、以下の点が主な問題となる。

  1. 質問…プレイヤーは、できるだけ自由に質問を発想することができる必要がある
  2. 回答…コンピュータは、プレイヤーが行なえる全ての質問を正確に解釈し、正確に回答する必要がある
  3. 正解…プレイヤーが正解に辿り着いたことを、何らかの形で確認する必要がある
  4. 問題…問題を用意する必要がある

この点について、『スローンとマクヘールの謎の物語』はどうなっているか。

1. 質問…プレイヤーは、問題文に含まれる単語を起点に、いくつかの単語を組み合わせて質問を作成することができる。

ゲームを開始すると、画面上には問題文が常時表示される。その中の単語の1つをペンでタッチすると、その単語を起点に、いくつかの連想される単語が表示される。それらの一つをクリックすると……を何度か繰り返すと、それまでに選んだ単語の組み合わせから質問が作成される。
また、核心を突く質問をすると、少し詳細な背景の説明が入り、選択可能な単語が一つ増える。
作成というよりは検索に近い趣きだが、質問の入力形式としては悪くない。表示単語数がさほど多くなく、したくてもできない質問も多いが、逆に言うと、実際のところ、いきなり突飛な連想をされると破綻することも多い『ウミガメのスープ』というゲームに対する、ある種の抑止力として機能していると言えなくもない。『ウミガメのスープ』を遊んでいて、適当な思いつきで脈絡無い質問をしていきなり核心だった時ほど空しいことはない。

2. 回答…質問文をソフト側が用意しているので、当然全て回答可能。良質問にはちょっとした解説も付く。

先ほど質問について「作成というよりは検索に近い」と書いた通り、質問文は全てソフト上に予め用意されている。そのため、当然回答は可能である。
また、良質問(とソフト内で指定されている質問)をすると、「YES」「NO」の回答以外に少し説明が入ることがある。『ウミガメのスープ』では意外と質問と回答の意図に関する理解が、質問者と回答者とで食い違っているという場面が多いので、説明を加えることで食い違いを最小限に抑える意図もあるかと思うが、どちらかというと「質問数を少なく抑える」意図を感じる上、想像力を働かせる余地を狭めていることも多く、問題終盤の質問に至ってはほとんどオチが書いてあることも多いので、マイナス面が大きいように思う。

3. 正解…正解確認モードがあり、プレイヤーは正解が分かっていないと答えられない幾つかの質問に答えることになる

実際の『ウミガメのスープ』でも終わり時は曖昧だが、問題文に含まれている質問(「男は何故自殺してしまったのでしょう」)に対する正しい回答を確認する質問をされた時、真相と呼べるほぼ全ての事実が明らかになった時、皆がある程度正解に思い至り「お〜分かった〜」みたいな雰囲気になった時、などが終わり時になることが多い。
スローンとマクヘールの謎の物語』においては、プレイヤーが正解に至ったかどうかを確認する専用の画面(モード)が存在する。
そこでは、真相を把握していないと答えられない質問がソフト側から複数なされ、全て正解した時、プレイヤーは真相に至ったと認識され、問題は終了となる。
概ね問題ないと思うが、たまに真相と呼ぶには瑣末な点に関する質問があり、しかも確認に時間が掛かることがあったり、完璧とは言いがたい。

4. 問題…原典あり。ただし駄問だらけ。

スローンとマクヘールの謎の物語』には全80問の問題が入っており、全て、ある書籍を原典としているらしい。
それはそれとして、ウミガメのスープ』を除いて、まともに面白い問題がほとんどないのが、本ソフトの最大の欠点と言える。これはそのまま、スローン氏とマクヘール氏による原典書籍の欠点でもある。
ウミガメのスープ』のような遊び方をするゲームを『水平思考パズル』などと言うらしいが、まずその必要もない問題が多すぎる。問題文だけ見て答えが分かる問題、ただの不完全なナゾナゾ、似たような正解候補を総当りするだけの問題、似たような問題。辛うじて存在するいくつかの良問も、質問不足やソフト側の回答、正解確認モードが台無しにしている場合もあり、時間が潰れる以上に面白い問題が実に少ない。後で数えてみるが10問あったかどうか。
続編が出るらしいが、もう『ウミガメのスープ』使っちゃったのに大丈夫なんだろうか。

■システム面は小改良で十分。問題・回答文など、ソフト面の充実が必要かと。

質問作成の自由度の低さを除けば、ゲームの大まかな形式はこれで悪くないかと思う。質問増量、隠しキーワード増量、回答文改善で、だいぶ質の向上が期待できる、はず。
あとは、良い問題を。原典になければ作れば良いじゃない。

■ところで、『ウミガメのスープ』ってどう解くの

以下、ネタバレ。
以下追記