キック・アス(Kick-Ass)(2010)

【085/100】

キック・アス DVD

キック・アス DVD

コミックのスーパーヒーローに憧れるオタク少年が自作コスチュームでヒーロー活動を始め、同じく自作コスチュームでギャング殺害を繰り返す親娘と出会ってその戦いに巻き込まれる話。
映画は全体的にテンポ良く、どれも良質で見応えあるアクションシーンをBGMが的確に盛り上げていてなかなか良い感じ。残虐なシーンもあるけど、「目を覆いたくなる」とか「ドン引き」するとかの一歩手前の絶妙なバランスが保たれていて、テンションを落とすことがない。これは、キックアスの情けなさを描くシーンも同じ。割と安心して観られる映画。
で、まぁ面白かったんだけど、個人的には、ストーリーがちょっといただけなかった。
しばしば指摘されていることだけど、キックアスの物語として始まった映画はいつしかビッグダディとヒットガールの物語に摩り替わってしまい、キックアスは単なる巻き込まれサイドキックとして作中での役目を終えることになる。ビッグダディとヒットガールの物語は復讐劇だけど、そもそもビッグダディ*1もヒットガール*2もマジキチな上に、根本的な復讐のきっかけはダイジェスト紹介なのであまり感情移入できない。まぁ、それでもヒットガールのビッグダディ&キックアス救出シーンとか超格好良いけどね。Fuckin' Awesome!!
一方キックアスの物語。まぁこいつもこいつで割とネジ飛んでる*3んだけど、ひ弱なヲタ少年ながら「アメコミヒーローのようになろうとする奴が一人くらいいてもいい」を信念にコスチュームと武器を揃えてヒーロー活動もどきを始め、初陣で刺されてついでに轢かれても諦めずに活動を続けて、遂に屈強なギャング3人を相手に被害者を守り切る大立ち回りで有名になる辺りは、メチャクチャ燃える展開。スムーズでキレのあるアクションじゃないけど、作中のアクションシーンではここのキックアスの格闘シーンが一番好き。クライマックスでは、この乱闘を更にグレードアップした物が何より観たかったんだけど、実際にはその後キックアスは殺しも辞さないヒーロー親娘に出会って萎縮し、引退を覚悟した頃に捕まり、助けられた後はヒットガールのサイドキックとして謎装備で空を飛び、重火器をぶっ放し、敵方の貧弱ヒーロー・レッドミストと何ら見応えのない叩き合いを演じる悪い意味での情けなさで終わってしまう。キックアスはヒットガールのピンチに駆けつけたけど、別にヒーローとして立ち上がったわけじゃない。そこがちょっと気に入らなかった。
「え、俺これからこのバズーカでカタルシスを得なきゃいけないの?」
があのシーンの正直な感想。結果は案の定。アクションシーンは良かったけど、キックアスを観続けた中で育まれた「俺の観たいシーン」はこれじゃなかった。ビッグダディのアクションも格好良かったのにあの1回だけだしなぁ。まぁヒットガールのアクションも格好良いんだけどね。
スーパーヒーロー漫画に対するメタ的な物語だけあって、それ系のネタが山ほど出てきてるので、知識があるとより楽しめるのかも知れない。スパイダーマンとかスーパーマンの名前も出てくるけど、生身の人間がコスチューム着たヒーローばっか出るせいか全体的にバットマンリスペクト多め*4。俄ながら一番知ってるのがバットマンだからそこは嬉しかった。
そういえば、キックアスとレッドミストの仲が深まるシーンってあの"Crazy"でヘドバンしてるシーンだけ? キックアスが捕まるシーンで「え、いつの間にそんな仲良くなったっけ」とか思ってしまった。
最後に。
英語字幕つけろよ!!!!!
いじょ。

*1:作中年齢11歳のヒットガールに幼少から訓練をつけて復讐の手伝いをさせたり、自分を助けようとするヒットガールに瀕死で何を叫んでるかと思えばアメコミヒーロー他に準えた作戦のアドバイスとか正気とは思えない。作中ヒーローでは一番格好良いんだけど。

*2:被害者だけどね。11歳にして覚悟完了してるネジ飛んだ娘。

*3:初陣でいきなりナイフで刺されて瀕死ったのにヒーロー活動やめないとか尋常じゃない。

*4:「ウェットスーツ・クルセイダー」とかね。