BECKのEVOLUTIONがGuerrilla Radioに似てるとか似てないとかいう話
結局のところ、映画BECKでのラストライブについて、千葉ボーカルのEVOLUTIONの格好良さばかり話題になってるってことはコユキの件の演出ってやっぱ失敗だったんだねとか相変わらず観てもいないのに思うこの頃。
そんなことより、タイトルの通り、BECKのEVOLUTIONがRage Against The MachineのGuerrilla Radioに似てるという話がよく取り沙汰されてるのを見かける。何で見かけるかっていうとEVOLUTIONの動画観まくってるからなんだけど。
まぁ、「似てる」というのは間違いない。
基本的に1小節のギターリフを繰り返す伴奏や、サビのシャウトのタイミングなんか、「Guerrilla Radioっぽい曲を作りたかったんだなぁ」というのが如実に伝わる類似点ではある。
ただ、「カバーだよね」「許可取れ」「オフィシャルに表記がない」まで言われてるのを見ると、さすがに首を傾げざるを得ない程度の似具合だとも思う。なので、そう言われてる今、敢えて似てない点を挙げることにする。
■1. そもそもギターリフが言うほど似てない
とりあえずKeyを無視してメインのギターリフの音を書くと
| EVOLUTION / BECK | ラー | ドッ | ドー | ラレ | ード | ラッ | ― | ― |
| Guerrilla Radio / RATM | ソー | ラッ | ラー | ソラ | ーソ | ラー | ドー | レー |
リズムは似ているものの音程はまるで一致しない。また、EVOLUTIONは2拍目裏からの「レード」で音高のピークを迎えるのに対して、Guerrilla Radioでは4拍目の「ドーレー」がピークとなる。短調のペンタである以外の音程上の共通点はかなり薄い。EVOLUTIONはリフ4順目が「ラードッドーラドッドーラドーレー」となっていて、やや上述のGuerrilla Radioのリフに近くなるが、Guerrilla Radioはその頃「ドーラーーーーーシーラーーーーー」という全く別のフレーズを弾いている。
■2. ヴァースのアレンジも全然違うよね
そしてラップが始まれば、音量は控えめなものの短調ペンタのギターフレーズ（これもGuerrilla Radioとは似ていない）が続くEVOLUTIONに対して、Guerrilla Radioでのギターはリフとも呼びづらいSE的フレーズの繰り返しに徹し、ベースも控えめで全体的にかなり音数が少なくなる。EVOLUTIONがイントロの流れを極力引き継いだのに対し、Guerrilla Radioは一度勢いを断ち切る格好だ。少なくともこのパートだけを聴いて「EVOLUTION = Guerrilla Radio」とか言う人は一人もいないはず。
■3. ギターソロに至っては、あるという以外に似ている要素が全くない。
EVOLUTIONのギターソロはオーソドックスなギターソロ。Guerrilla Radioのギターソロは変態的ギターソロ。聴けば分かるよね。
■1-2. 「でもやっぱ似てる」
とはいえ、上記の相違点はともかく、ギターリフを聴くと似ている気がしてしまうのも確か。ポイントは最初にわざわざ無視したKeyにある。
ここでKeyを原曲ママに戻すと、
| EVOLUTION / BECK | E- | G_ | G- | EA | -G | E_ | __ | __ |
| Guerrilla Radio / RATM | E- | F#_ | F#- | EF# | -E | F#- | A- | B- |
となり、
- 「E」を鳴らすタイミングが途中まで同じ（2回しかない上、Eの意味合いは両楽曲で異なる）
- リフに出てくる3番目の音が同じ「A」（タイミングは全然違う）
- 「E」の次が「G」「F#」と半音違い（GとF#は近いけど当然別の音）
という共通点が出てくる。
音楽的には違いが大きいのに聴感上似ていると感じる理由は多分ここ。
結局のところ「パッと聴いた感じ1小節のリフの前半2拍が何となく似てるよね」というのがEVOLUTIONとGuerrilla Radioのギターリフに関する類似の全てであり、似てる、似せようとしている、というのは正しくても「許可取れ」「表記しろ」「カバーだろ」などの指摘はまるっと的外れと言える。あんまり良くない視点だけど訴えても勝てない程度の類似。RATMメンバーに聴かせたら苦笑いするのは間違いないだろうけど。
■0. 共通点一覧
最後に、共通点一覧をば。
- そもそもEvolutionが「RATMっぽい（Guerrilla Radioっぽい）曲」を目指した事自体は間違いないと思われる
- テンポは大体同じ
- メインのギターリフが共に短調ペンタであり、リフのリズムが似ている
- イントロとサビが同じギターリフ
- ボーカルはラップ
- サビでのボーカルのシャウトのタイミングが大体同じ
- ギターソロがある
いじょ。
