バットマン(Batman)(1989)

【060/100】DVD観賞。

バットマン [DVD]

バットマン [DVD]

悪人を次々に襲う謎の覆面男バットマン、マフィアに身を置きながらボスに嵌められ狂気の愉快犯と化したジョーカーことジャック・ネイピア、謎の大富豪ブルース・ウェインバットマンを追いながらブルースに惹かれるヴィッキー・ベールの織りなす物語。
まぁぶっちゃけブルース=バットマンなわけだけど、そのブルースがヴィッキーに惹かれながらもバットマンとしてジョーカーと対峙する運命になりつつあったり、そのためにヴィッキーに嘘吐いたり距離を取ったりしてなかなか上手く行かないね的なブルース側の物語と、バットマンに薬品槽に落とされて*1肌の色を失い表情には笑顔が貼りついてしまったジョーカーが狂って自己顕示欲のままにジョークじみた犯罪を重ね、にも関わらず自分より話題を独占したり度々邪魔をしたりしてくるバットマンにイラついて更にエスカレートしていくというジョーカー側の物語が同時進行することになるわけだけど、いまいちこの物語に乗り切れなかった。
ジョーカーは判る。後の「バットマン・ビギンズ」でヘンリーが、「ダークナイト」でブルースが言った「犯罪者の動機は単純」を体現したような、自己顕示欲とバットマンへの恨みとジョーカーの名に準えた犯罪美学だけで行動する犯罪者で、バットマンに邪魔されるたびに「くそうならば今度は」とやる様はヒーロー物テレビ番組の悪役的なメンタリティなので実に判り易い。
問題はバットマン及びブルースだ。ブルースの行動というか物語がいちいち行き当たりばったりで、キャラの動機も思考も物語上の役割もいまいち見えてこない。にも拘らず、物語の核はブルースのメンタルにあるのだからどうしようもない。バットマンバットマンで、めちゃくちゃ強そうな割に無駄に隙を曝してピンチになったり中身がブルースだけに同じく行き当たりばったりだったりして、怪人としての実像が掴みづらい。活躍するかピンチになるかは物語の都合という印象が最後まで拭えなかった。
終盤の毒ガス噴霧時のノックスの行動など意味不明な点も多く、伏線も少なく情報が描写も後出し後出しで、観ててここまで明確に「物語が悪い」「構成が悪い」と思った映画は、まぁあんま映画観てないせいだけど初めて。
原作がそうであるようにゴシック調を基調としたゴッサム観が徹底され、ジョーカーのあまりのふざけっぷりと、対するバットマンのヒーローと呼ぶにはあまりに変態じみた一挙手一投足が作り出す雰囲気は独特で、そこは魅力的だった。物語で損してる映画だと思う。
最後に二人の怪人について。
ジョーカーのキャラクターは、既に散々言われている通りダークナイトのそれとはかなり異なる。犯行の内容そのものはダークナイト版より遥かに悪質なのに、行動原理としては愉快犯としての面の方が遥かに強く、犯罪者というよりは狂った芸人という印象が強い。結果、ダークナイト版とは違った意味で、犯行シーンが見てて楽しく、魅力的なキャラクターになってた。まず本人が楽しそうだしね。……てか、ジョーカー役のジャック・ニコルソンが超大御所*2って事前に知ってたから、こんなに弾けた演技してると思わなくてびっくりした。ここまで出来るが故の大御所ということだろうか。
一方のバットマンダークナイトバットマンが正義の特殊戦闘員といった印象なのに対して、こちらは戦う変態という印象が強い。ただ、中の人が冴えない割にバットマン姿の顔は実に格好よく、なるほどダークナイトよりこっちのバットマンのデザインが好きという人の多いのが良く分かる*3。問題は首から下で、原作譲りの黄色い胸のシンボルマークが実写だとすっげーダサい。電飾のない小林幸子みたいにマントを手で広げる仕草も致命的に格好悪い*4。ただ、その辺の些事よりは、結局キャラが固まってないせいでその辺の演出や意匠が単に要素として浮いちゃったんじゃないかという気がしないでもない。魅力的な所もあるけど、全体的にはイマイチだった。

*1:自業自得だけど。

*2:全然知らなかったけど……。

*3:ちなみに俺はダークナイト派。

*4:ただ、そこからバンとマントを下ろすところは格好良い。