ダークナイトライジング観てきた。

超久々の映画館鑑賞。近場にIMAXシアターなんて気の利いたものはなくて、適当な映画館で字幕鑑賞してきた。
以下、ネタバレ上等(一応核心は控えてるつもり)。

■おおざっぱな感想

気の利いた締め方だったこともあって最後まで楽しめたし凄い画もたくさん観られたけど、「傑作か?」と言われると首を傾げたくなる映画だった。

■気になった点

冒頭のベインによる初犯行シーンは震えがくるほど緊迫して見応えがあったけど、終わった直後にテンションは緩んで、以降最後まで冒頭シーンに匹敵するシーンがないまま終わったのがまず残念。作風的にも後の展開とあんまり関係ないので「あのシーンなんだったの」感も半端ない。(この点で前作・ダークナイトを振り返ると、冒頭シーンはもちろん名シーンだけどそのテンションはそのままバットマンの出番まで引き継がれてて緩むことがないし(ってかダークナイト自体がかなり異形な感じのノンストップ映画だからほとんど緩まないんだけど)、冒頭シーンが予言した通りの犯罪映画風味が最後まで貫かれるので冒頭だけ浮くってこともなかった)
お話はというと、大枠になるのはベインが作り出した状況による戦争映画風味だけど、核になってるのはラーズ・アル・グール一族物語で、マクロとミクロの物語の噛み合わせがすっごく微妙。象徴的なのが両者が入り混じるバットマンとベインの再戦シーンで、警官と市民軍(?)が大乱闘してる中でタイマンのFist Fightingを繰り広げる二人の滑稽なことといったらもう……。挙句終盤には戦争映画風味は謎のフェードアウトを遂げてラーズ・アズ・グール一族物語で決着がつくので尻すぼみもいいとこ。結局市民がベインの演説とゴッサムの状況に対して何を思ってどんな選択をしたのかもよく分からないまま彼らの行く末も描かれることなくどうでもいい感じになって終わるし、ダークナイト市民感情がほとんど描けてなかったことと併せてノーラン監督は「人々」を描くのをやめるか何か観てお勉強した方がいいんじゃないかと映画をロクに知らない俺ですら思った。
おまけにバットマン=ウェインの再起物語は単なるスポ根もので、ロケーション的にも浮いてて実にアレ。しかも最後の難関の画がしょっぼいしょぼい。途中経過に象徴的な画を入れてる割に最後がアレってどうなのよ。
あと細かいことだけど、前作の超重要要素だったレイチェルの手紙の真実がどうでもいい感じで開陳されてどうでもいい展開の引き金になっただけで終わったのもどうなのよ。あれ展開に邪魔な(無事生存させるのに苦労しそうな)アルフレッドを作品から追い出しただけじゃん。

■よかったところ

とまあ正直要素にフォーカスすると割と不満たらたらなんだけど、いいとこもあったよ。
まずはハンス・ジマーによる音楽。今作に関しては、明らかに音楽でもってるなってところがちょくちょくあったし、「おいおい、こんな画に使われて曲が泣いてるぞ……」って思うような箇所もあった。
あとはアクション? つっても俺の大好きな格闘シーンはダークナイトより出来が落ちてて見応えのあるのが1つもなかったわけだけど、乗り物に乗ったバットマンキャットウーマンは常時格好良かったです。
後は……なんだ、ダークナイトよりはウェイン個人の物語が描かれてたね。ダークナイトが淡泊だったから「あ、レイチェルが死んだのそんなにショックだったんだ」とか思ったけど。
あと、この映画ってお話としてはナイトフォールとノーマンズランド(他にもあるのかも、俺は知らんけど)をダークナイトリターンズでサンドイッチにしたような感じだったんだけど、ダークナイトリターンズ部分がとっても美味しかったです(^q^) 実のところ前作では市民にも警察にも全っ然疎まれてなかったバットマンだけど、理由はどうあれ警察に追われながら犯罪者と戦う四面楚歌なバットマンの顛末はスリリングで、冒頭シーンとはまた違った意味で見応えがあった。やっぱダークナイトリターンズ映画化しようぜ。
あと、ジョン・ブレイク超格好よかった。力はなくとも真っ当な正義感で諦めずに動き続ける彼の姿が本当に格好良くて、バットマンも同じような見え方にできなかったのかなって思ってしまう。お前こそヒーローだよって思ってたら最後で(自粛)ってことでそこは割とスカッと満足だった。
えー、あとは……バットマンとゴードンの最後の会話。言ってみればバットマン・ビギンズのクライマックスの焼き直しなんだけど、建前の女遊びを窘めただけの言葉をクールに返しただけのビギンズと違って、あのセリフがあった瞬間からゴードンとバットマンって保護者と子供なわけじゃん。言ってみりゃ父と子なわけですよ。で、ゴードンがそれに気づいた瞬間、子であるバットマンは死地に赴くわけですよ。泣くよ! ビギンズと全然重み違うよ!

■まとめ

……というわけで、割と具体的に不満たらたらな割に終わってみればそれなりに満足だったのは、今作のいいところが一点集中した終盤〜ラストのお蔭なんじゃないかって気がしないでもない。
あと、戦争映画風味なだけあって話のスケールが前作とは比較にならないくらいでかい(側面もある)ので、前作とは異質の迫力があったのも事実。「ダークナイトって劇場版パトレイバー2に似てる」みたいなエントリーが俺のはてなダイアリー管理ページの下書き記事一覧に眠ってるんだけど、平和な町が疑似的に戦争状態になったってシチュエーションで戦争の身に迫る感じが云々的な点では今作も似てるといえなくもないよね。いや、今作ではそこまで効果的ではなかったけど。
以上。
最後まで楽しんだけど、もっとガッツリ満足させてくれると思ってたのでちょっと残念だった。